上白根病院は、神奈川県横浜市西部医療圏に属し、総人口約111万人（2010年）の大都市型二次医療圏であります。その中でも、当院のある旭区につきましては、2015年をピークに将来推計人口が減少傾向にあり、2025年には65歳以上の方が5割を超える見込みとなっております。また、2035年には生産年齢人口（15歳から64歳まで）が54.6％に対して、高齢者人口・後期高齢者人口（65歳以上）が57.9％と、人口割合が逆転されることが見込まれております。
　令和元年度年齢階級別退院患者数につきましては、前年度と比較すると減少傾向にあります。要因としましては、内視鏡検査や白内障手術の外来移行に伴い、より患者さまのニーズに応えた医療の提供を目指したところにございます。加えて、コロナ禍の影響を受けており、受け入れ制限を行わざるを得ない状況にございました。一方で、近年、救急に力を注いできた不断の努力の結果、緊急入院（予定外入院）の割合が80.2％を占めており、前年度の68.2％を上回る結果となっております。また、救急車の受け入れ数につきましても微増ではございますが、増加を示しております。
　地域の特性上、大学病院やがんセンターなど機能の異なる病院が集まった地域になっておりますが、今後も当院の役割を認識しつつ、地域の先生方や介護施設と連携を深めていく所存にございます。地域の皆様に医療や介護が必要になったとき、最適な環境が提供できる存在として、恵生会・清光会グループの「あんしんネットワーク」で支えていくことを目指しております。

　当科は横浜市立大学医学部外科治療学教室の関連施設として、主に消化器外科領域の専門医による診療を行っております。同教室の関連施設である神奈川県立がんセンターとも連携し、最新の知見をもとに、それぞれ背景の異なる患者さまに最適な治療（手術療法および化学療法）を提供いたします。

　市中肺炎とは自宅で生活していた人がかかる肺炎ですが、時に意識障害、血圧低下、低酸素血症を伴い、さらに高齢者、脱水の要素が加わると重症と診断されます。軽い肺炎であれば１週間程度の入院ですみますが、当院では高齢者の肺炎患者さまが多いせいか、中等度以上の肺炎が90％以上を占め入院日数も2週間以上かかっております。また重症、超重症患者さまの平均年齢は85才以上であり、高齢になるに従い肺炎が重症化しやすい傾向にあり早期の対応、診断が必要です。

　脳梗塞は、脳の動脈が突然詰まることにより、急に意識障害や半身の麻痺・痺れ、呂律障害を起こす疾患です。いわば脳が窒息した状態であり、診断と治療は一刻を争うものです。当院では、脳神経外科、脳神経内科、リハビリテーション科がチームを組み、迅速な診断と治療を心がけ、積極的な早期リハビリテーションを行っております。リハビリテーションは、運動機能の回復を目標とした理学療法や、日常生活動作能力・高次脳機能障害の回復を目的とした作業療法、言語機能や摂食機能の回復を目的とした言語聴覚療法など、総合的に機能回復をめざしたリハビリテーションを行っております。

　敗血症は感染症によって引き起こされた全身性炎症反応です。高熱、脈、呼吸数の増加、血液検査の白血球数を基準に診断します。原因となる感染症は肺炎、腹膜炎、肝胆道感染、髄膜炎、尿路感染症など多岐にわたります。全身に菌がばらまかれる菌血症の状態なので早期に血液培養して病原微生物を同定する必要があります。診断が遅れたり、もともと全身状態が悪いと、腎臓など重要臓器の障害や血圧低下が進行し血液が酸性に傾き多臓器障害が進行します。